東京高等裁判所 昭和26年(ウ)322号 決定
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(事実)
抗告人は相手方を被告として、東京地方裁判所に損害賠償請求の訴を提起し、その請求原因として原告(抗告人)は被告(相手方)に対し、昭和二十五年五月十七日汽船興亞丸(当時の所在地は神戸)を代金九十万円内手附金二十万円は同日に支払い、残金七十万円はその船舶の引渡と引換に支払う約束で売渡したところ、被告(相手方)は右手附金の支払をしないので、原告(抗告人)は同年九月二十六日右契約を解除し被告(相手方)の債務不履行によつて、原告(抗告人)の受けた損害金三十七万二千六百八十五円の賠償を求めるものであると主張し、その義務履行地は原告(抗告人)の日本における最後の住所が、東京都澁谷区神山町四七番地ハンガリー公使館内である関係上、その地を義務履行地と解し、この訴を東京地方裁判所に提起したところ、同裁判所は抗告人の住所又は居所が日本国内に存在しないから、本件の義務履行地も日本国内に存在しないものとして、本訴を被告の普通裁判籍のある大阪地方裁判所に移送する旨の裁判をした。抗告人はこれに対し抗告をなし、その理由として、債権者の現在の住所が海外にある場合に、その住所に持参して弁済させることは債務者に苛酷な義務を負わせることになるから、債権者の最後の住所地をもつて弁済の場所と解することが、債権者のためにも債務者のためにも利益な結果となると主張した。
(判斷)
抗告棄却。その理由は次の通りである。
「民事訴地法第五条により財産権上の訴は義務履行地の裁判所にこれを提起し得るものであり、債務不履行にもとずく損害賠償の請求をするについて、その履行の場所を特に定めなかつた場合は、民法第四八四条により債権者の現在の住所をもつてその弁済を受くべき場所と解すべく、従つて債権者の現在の住所地を以て義務履行地と解すべきものであるが、これは訴提起当時債権者が日本国内に住所又は居住を有したときに限ることは勿論である、抑々民事訴訟法は管轄については原告の方より被告と関係ある地点に出向いて訴を提起すべきことを原則とするものであり、同法第二条第二項後段の規定も、本来被告の普通裁判籍をきめるためのものであり、原告たるものの住所又は居所が日本にないときにまで類推すべきものではない。